横浜市医療局、医療ビッグデータを活用 全国の基礎自治体で初めて、NDBデータの分析に着手
横浜市医療局は医療ビッグデータを活用した課題解決に向けて、NDB(ナショナルデータベース)の分析を横浜市立大学の臨床統計学教室(山中教授)と連携協定を締結して行う。
分析結果は「横浜市がん撲滅対策推進条例」に基づき推進している「総合的ながん対策」の充実を図るために活用される。
平成28年9月7日
医療局 情報企画担当
横浜市立大学
横浜市記者発表資料横浜市の医療政策に医療ビッグデータを活用 全国の基礎自治体で初めて、NDBデータの分析に着手
横浜市では、適切な医療を提供するために、医療に関する課題把握と解決に向けた政策を展開しています。こうした中、医療ビッグデータを活用した課題解決に期待が寄せられています。
このたび、医療ビッグデータの代表例であるNDB(ナショナルデータベース:全国のレセプトデータ等を一元化した国が保有するデータベース)データの提供について、全国の基礎自治体で初めて、国から承諾を得ることができました。年内にデータを受領し、分析を進めます。また、実際のデータ分析は、統計専門家の協力を得て進める必要があるため、横浜市立大学の臨床統計学教室(山中教授)と連携協定を締結して行います。1. 分析の目的
今回は、医療ビッグデータ分析の第一弾として、横浜市域のがんに関する医療実態の把握を目的に、NDBデータの提供申出を行いました。
これまでは、全国一律の汎用的な統計データやアンケート調査などから類推するしかない部分が多くありましたが、横浜市を対象としたNDBデータを分析することで、年齢・がん種・治療方法など多様な切り口で、細やかに医療実態を把握できるようになります。
分析結果を活用し、「横浜市がん撲滅対策推進条例」に基づき推進している「総合的ながん対策」の一層の充実を図っていきます。【政策活用想定例】
化学療法の状況:外来通院頻度、抗がん剤の種類と投与状況
⇒就労世代の通院頻度や、抗がん剤での治療状況を明らかにし、企業への啓発や、病院での就労相談など仕事と治療の両立支援を進めます。緩和ケアの状況:がんによる痛みの緩和を目的とした鎮痛剤の投与状況
⇒がんによる痛みのコントロールを必要とする患者の状況を把握し、緩和ケア病棟の整備や、専門医との連携など地域での緩和ケア充実を図ります。2. 臨床統計学教室との連携について
NDBデータの分析には、大量のデータに対する統計分析の知識・技術はもとより、適切に分析結果を読み解くための医学的知識が必要です。
臨床統計学教室には、遺伝子ビッグデータから乳がんや大腸がんの再発リスクを予測する手法の妥当性検証に携わるなど、データサイエンスの国内リーダーの一人として知られる山中教授をはじめとして、医学的知識・経験が豊富な専門家が多数在籍しています。そのため、連携協定の締結により、行政単独では困難なNDBデータを政策活用できる体制を実現しました。山中 竹春教授 (横浜市立大学 医学部 臨床統計学教室)
厚生労働省の先進医療専門部会メンバー、再生医療実用化研究事業(AMED)評価委員等を通じて、iPS細胞治療をはじめとする先端医療の実用化にデータ解析専門家の立場から注力しています。
九州大学医学部附属病院助手、米国国立衛生研究所リサーチフェロー、国立がん研究センター部長などを経て、平成26年より現職。平成27年より横浜市立大学次世代臨床研究センター副センター長(兼任)。広島大学客員教授。博士(理学)。ナショナルデータベース(NDB)
(1) 概要
日本全国の医療機関から電子化されたレセプトデータ(診療報酬請求に関するデータ)、特定健診等データを収集し、国が匿名化を施し、一元的にデータベース化したもの。
■NDB収載データ数■ ※平成27年9月時点
・レセプトデータ 約103億4,000万件(平成21年4月~27年8月分)
・特定健診・保健指導データ 約1億4,200万件 (平成20年度~25年度分)(2) 承諾に向けた手続き
厚生労働省へ指定の様式を添え、申出を行い、「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」(厚生労働省所管)(年4回開催)での審査を経る必要があります。
申出形式は、研究内容や求める情報量によって3パターン(①特別抽出②サンプリングデータセット③集計表情報)から選択する必要があり、それぞれ審査要件が異なります。
横浜市は、データ範囲等を指定した特別抽出の申出形式(横浜市内のがん治療に関するレセプトデータ:平成26・27年度の24か月分)で申請を行いました。(3) 提供申出対象者の拡大の経緯
これまで提供申出の対象は国の行政機関、都道府県や研究機関に限定されていましたが、対象者の拡大について、「レセプト情報等の提供に関する有識者会議」(平成28年1月20日、6月 29日)にて検討され、提供申出対象者を定める「レセプト情報・特定健診等情報の
提供に関するガイドライン」が改正されました。これにより自治体からの提供申出について、これまで都道府県のみに限定されていましたが、基礎自治体(市区町村)まで対象が拡大されました。
■参考:厚生労働省サイト(レセプト情報・特定健診等情報の提供に関するホームページ)
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/reseputo/index.html連携協定について
(1)協定名称
NDBデータの分析・研究に関する連携協力協定
(2)協定の内容
NDBデータの利用に必要な手続き、分析端末などの環境整備、連携協力した分析・研究
(3)締結日
平成28年4月27日締結(有効期間:平成30年4月30日まで。以降は1年ごと更新)お問合せ先
データの受領に関すること 医療局 情報企画担当課長 佐々木 雅純 Tel 045-671-4813
分析に関すること 横浜市立大学 臨床統計学教授 山中 竹春 Tel 045-787-2572